SPACE FACTORY 2004
シリーズ3
童話の世界 Vol.4
『ガラスのかけら』〜アンデルセン童話「雪の女王」より〜
■概要 『雪の女王』はカイとゲルダという幼い男の子と女の子の物語です。兄弟のように仲の良い二人は、貧しいけれど、楽しい幸せな毎日を送っていました。けれどもある日、悪魔の鏡の砕け散ったガラスのかけらが、カイの目に飛び込み心臓に突き刺さってしまったのです。悪魔の鏡には、大きく美しい物は醜く小さく見え、その反対に、悪いいやな物は大きくはっきり見えるという不思議な力がありました。優しかったカイはすっかり人が変わったようになり、やがて雪の女王に心を奪われ、北の果ての雪と氷の国へ連れて行かれてしまいます。そこで、一人残されたゲルダはカイを探す旅に出かけます。ゲルダは途中、魔法使いや王子と王妃、山賊などの様々な人々、それにたくさんの動物たちと出会い、幾つもの困難に遭遇しますが、彼女の穢れのない清らかな子供の心が、出会った者たちの心を動かし、誰もが皆ゲルダを助けてくれます。そしてとうとう雪の女王のお城にいたカイを見つけ出し、氷の塊のようになってしまったカイの心臓をとかし、無事に連れて帰ることができるのです。
カイの心臓に刺さったガラスのかけらは、言うまでもなく、私たち大人がいつのまにか身に付けてしまった、人を疑う気持ちや、相手をばかにしたり、恨んだり妬んだりする醜い心を表しているのでしょう。
人は大人になるにつれ、周囲の様々なものから自分を守るために、知らず知らずのうちに冷たく大きな鎧を身に纏います。しかし、どんな頑丈な鎧も、何事も疑わず、まっすぐに突き進む素直な子供の心にかかると、いとも簡単に打ち砕かれてしまうのです。カイが雪の女王から“永遠”という文字を完成させるという命題を与えられます。
“永遠”とは、人々がいつの世も追い求めながら、けっして手に入れることのできない大きな夢です。けれども、大人にとっては叶うことのない見果てぬこの夢も、子供のように真直ぐな心さえあれば、もしかするとごく身近にたやすく手に入れられるのかもしれません。アンデルセンは、大人になるにつれて穢れてしまった自身の心への哀しみを胸に、今はもう取り戻すことの出来ない子供の心への深い憧れの気持ちを込めてこの童話を書いたのではないでしょうか。
act_1へ