SPACE FACTORY 2011
シリーズ4
『夢の浮橋』 〜源氏物語より〜
巻の四 「儚(はかな)い女 ― 夕顔 ―」
■概要  ある夏の夕暮れ、乳母の病気を見舞うため五条辺りへ出かけた光源氏は、隣家に白い夕顔の花が咲いているのを見つけ、その家の内に花を所望します。 すると、女性の筆跡で歌が書き付けられた白扇に花が載せられ差し出されます。この女性が、夕顔です。

 これより少し前の雨の夜、宮中の源氏の部屋では貴族の若者達が集まり女性談義に花を咲かせました。 その折、“中の品(中流階級)”にこそ個性的で魅力に富んだ女性が隠れているものだと語られます。夕顔は、まさにその“中の品”の女性でした。

 これは後になってから判明することなのですが、じつは、夕顔は源氏の親友である頭中将との間に子までなした女性でした。 しかし頭中将は、恨み言のひとつも言わぬ夕顔のおっとりとした性格をいいことに、彼女をいい加減に扱い、しかも彼の妻からはひどい嫌がらせを受けたので、 夕顔はついに耐えきれなくなり、頭中将の前から姿を消し五条辺りに身を隠していたのでした。

 一方、そのとき源氏はすでに親の勧めで年上の葵の上と結婚しており、さらに、前の皇太子の未亡人である6歳年上の六条御息所という恋人もいました。 しかし、夕顔には、上流階級の女性達のような気位の高さや堅苦しさがなく、何事にも抗わず、あるがままを受け入れる、彼女のおっとりとした優しさに、 源氏は心の安らぎを覚え、強く惹かれていきます。

 また、光源氏はちょうどその頃、義母である藤壺とのけっして許されることのない禁断の恋に悶々としていたので、 身分やしがらみから解き放たれて純粋に一人の男と女として相対することができる夕顔との逢瀬に、自由な恋の喜びを感じ、 彼女のもとへと足繁く通い続けることになります。

 季節は移り中秋の旧暦8月15日、夕顔の家に泊まっていた光源氏は、明け方になって急に思い立ち、逃避行のように荒れ果てた廃院へ夕顔を伴い、そこで一日愛を語らいます。 しかし、その夜、枕元に現れた六条御息所の生霊と思われる物の怪に襲われて、夕顔はあっけなく息絶えてしまいます。