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SPACE FACTORY 2019
シリーズ“日本のこころ”vol.4

『 二人の姫
−木花之佐久夜毘売命(コノハナサクヤヒメ)と豊玉毘売命(トヨタマヒメ)−
〜古事記「天孫降臨―日向三代の神々」より〜
概要  神話「古事記」によれば、神代の時代、天上の神々の国から地上へ遣わされた一組の男女神イザナギ・イザナミが、日本の島々(葦原の中つ国)を産み、続いて森羅万象の自然の神々を産んでいきました。しかし、女神イザナミは“火の神”を産んだ時の火傷がもとで命を落とし黄泉の国(地下の死者の国)に旅立ってしまい、男神イザナギは妻を追いかけますが、結局連れ戻すことは叶わず地上へ戻ってきます。そして、死者の国の穢れを祓うため禊を行うと更に様々な神が生まれ、最後にアマテラス、ツクヨミ、スサノオの三柱の神が生まれました。
 アマテラスは太陽を司る神として神々のいる天上の高天が原を治め、ツクヨミは夜の国を治めることになりました。スサノオは海を治めるように命じられますが、乱暴者で少しも言うことを聞かずに次々と悪さをし、ついに高天が原から追放されてしまいます。地上の国に降り立ったスサノオは、出雲の国でヤマタノオロチを退治して命を救ってやったクシナダヒメを妻に娶り、出雲に宮を立てて、大勢の子供を生み、次々と子孫を増やしていきました。
 スサノオから六代目にあたるオオクニヌシは、他の大勢の兄弟の神々より知恵も力も器量も優れており、次々と降り罹る災難や試練に打ち克ち、スサノオの娘スセリヒメを妻にもらい、国つ神を次々と従え、葦原の中つ国(地上の国)を平定し治めるようになります。

 さて、地上の繁栄を高天が原から見ていたアマテラスは、スサノオの子孫が地上の国を治めているのが気に入りません。アマテラスの子孫こそが治めるべきだと言い出し、幾度か遣いの神を地上に差し向け、ついにオオクニヌシに“国譲り”を承知させたのでした。
 こうしてアマテラスの孫にあたるニニギが、葦原の中つ国を治めるために、地上へと下ることになります。日向の高千穂の峯に降り立ったニニギは、ここに宮を立てました。これがいわゆる“天孫降臨”です。

 やがてニニギは美しい娘コノハナサクヤヒメと出会います。この娘は山の神オオヤマツミの娘で、咲き誇る桜の花のようにいや栄える力を備え持つ、世にも稀な麗しい姫でした。コノハナサクヤヒメはたった一度の契りでニニギの子を身ごもりますが、それをニニギがどこかの国つ神の子ではないかと疑うと、戸のない産屋に籠り火を放ち、その中で無事に出産してみせることで、見事にその疑いを晴らしたのでした。こうして生まれたのが、ボデリとホスセリ、ホヲリの三柱の御子です。ニニギは、アマテラスから受け継いだ天上の神の力に加え、地上の山の神の力をも秘め宿した子を得ることとなりました。

 この御子たちのうち、兄のホデリは海幸彦と呼ばれ海で魚を獲り、末の弟のホヲリは山幸彦と呼ばれ山でけものを獲って暮らしていました。
 ある日、ホヲリは自分の弓矢と兄の釣り針を取り替えてみようとホデリに提案します。ホデリはあまり気乗りはしなかったのですが、しぶしぶ釣り針を弟に渡し弓矢を受け取り山へ狩りに行きますが、結局うまく獲物を捕まえることはできませんでした。ホヲリも同様で、少しも魚は釣れず、おまけに兄の大事な釣り針を失くしてしまいます。
 それを聞いたホデリは大変怒り、ホヲリがどんなに謝っても許そうとはせず、ホヲリが大事な剣を鋳潰して沢山の釣り針を作って償おうとしても、元の釣り針を返すようにと迫りました。そこで、ホヲリは潮流を司る神に頼んで海の底へ釣り針を探しに出かけました。
 海の底には海の神ワタツミの宮殿があり、ワタツミはホヲリを天上のアマテラスの血を引く御子として大いに歓迎し、娘のトヨタマヒメを妻として差し出しました。ホヲリは三年もの間海の底の宮殿で暮らしましたが、やがて釣り針のことを思い出し、ワタツミの力を借りて釣り針を見つけ出し、自分を困らせた兄への仕返しの方法をワタツミから教えてもらい、トヨタマヒメを残して地上へと戻って行きました。地上に戻ったホヲリがワタツミから教えられたとおりにすると、兄は何もかもがうまくゆかなくなり、結局ホヲリに詫びて配下となったのでした。
 さて、海の底に残されたトヨタマヒメはホヲリの子を身ごもり、地上で出産するために海から上がってきました。浜辺に産屋を立て、自分が出産する姿を決して見ないようにとホヲリに告げて中に籠りましたが、ホヲリが怪しんで隙間から覗いて見ると、妻は大きなワニの姿になって子を産んでいたのでした。トヨタマヒメはホヲリに見られたことを大変恥ずかしく思い、子を産み置いたまま海の中へと帰ってしまい二度と戻ってくることはありませんでした。この御子は、母トヨタマヒメが自分の代わりにと地上に遣わした妹のタマヨリヒメに育てられ、やがて彼女と結婚し四柱の神が生まれます。その一番下の御子がカムヤマトイハレビコといい、この御子こそが、神話では日本の第1代天皇とされている神武天皇です。
 ホヲリとトヨタマヒメの孫にあたるカムヤマトイハレビコ(神武天皇)は、アマテラスから受け継いだ天上の神の力に加え、山の神オオヤマツミから授かった大地を治める力と、水を操る海の神ワタツミの血をも受け継ぎ、この世のありとあらゆるものを治める力を持つ大きな存在となったのです。

 「古事記」は、神武天皇の登場によって“神代”の物語から“人代”の物語へと移っていきます。